2017.02.09

浦河町観光ワーキンググループ視察レポート②~阿寒湖~

《平成28年度浦河町観光・まちおこし・ひとづくり事業》

 観光ワーキンググループ視察研修 

¶ 2017/2/4(土)・5(日)

¶ 視察先: クスろ、阿寒湖アイヌコタン、NPO法人阿寒観光協会、大樹町地域おこし協力隊


☞ 浦河町観光ワーキンググループ

浦河町では、浦河町民による主体的かつ自立的なまちづくりの推進を目指し、業種を問わず、様々なメンバーから成るワーキングチームを2015年4月より組織しています。『観光からのまちづくり』を基軸として、これまで『うらかわ旅』ウェブサイトの開設、浦河の「食」のプロモーション映像の作成、多様なテーマによる各種勉強会等を行っています。


 

とっても賑やかに暖かく迎えて下さった釧路をあとに、次に向かったのは阿寒湖温泉。

特別天然記念物のマリモが自生する貴重な湖を中心として、古くよりアイヌコタンが築かれてきた道東の温泉街・阿寒湖温泉。

今年度、浦河では観光ワーキンググループにおいて、『アイヌ文化と観光の可能性』を巡って数回研修会・勉強会を開催してきました。

浦河地方にもアイヌ民族が居住し、豊かな自然と共生しながらこの地域ならではの生活文化を築いてきた歴史があります。しかしながら、道内他地域と同じように、浦河においてもかつての北海道旧同人保護法などの同化政策や経済的な支配、また激しい民族差別の下、土地に根付いてきたアイヌ民族の文化習俗は急速に失われようとしています。

そうした危機的状況を迎え、昨年の春、浦河地方のアイヌ文化の継承、アイヌ民族のアイデンティティの復興のためRehe Isam(レヘイサム:アイヌ語で『名無し』の意)という団体が立ち上げられ、観光とアイヌ文化を有機的に結び付けようとする動きが町内でも見られるようになっています。

今後浦河でも地域ならではのアイヌ文化を観光資源として活用を図るため、今回はアイヌ生活相談員として勤務されている堀さん・八重樫さん(Rehe Isam代表)のお二人にも視察に参加していただきました。

ということで、来年度以降の浦河でのアイヌ文化の体験プログラムを作るヒントを得るべく、阿寒湖での主な視察メニューは3つ!

①アイヌ文化体験(ムックリ製作・古式舞踊見学)②アイヌ料理体験 ③早朝散歩ツアー

阿寒湖温泉の一角に、『アイヌコタン』はあります。アイヌの民芸品が並ぶ土産屋、地域の食材を生かした食事処などが軒を連ねています。

アイヌコタンの一番奥、アイヌシアターイコにて、まずはムックリ(口琴)製作を体験してきました。

ムックリとは、薄い竹の板で出来たアイヌの民族楽器の事で、弁に付いた紐を引っ張り弁を震動させることで音を出します。頬に当て、弁の震動を口腔内に共鳴させることで、音が微妙に変化します。
こちらの板の溝の内側を彫刻刀で彫っていきます!

彫刻刀を使ったのは図工の授業以来…と言いながら繊維に沿って彫り進めていきます。どこまで彫れば音がちゃんと出るのか、板が貫通しないように力の加減を調整するのがまた難しいのです。


彫り終えたあとは音の出し方を習います。

音階を奏でるためにはさながらコツが必要で、音を出すのも最初は大変ですが試行錯誤もまた楽しく、自らが体験することでアイヌ文化を少し身近に感じることが出来たように思います。


ムックリ製作を終えたあとは、阿寒アイヌ工芸協同組合専務理事・秋辺日出男さんに現代を生きるアイヌ民族や、観光とアイヌ文化の在り方についてお話しいただきました。

伝統的な民族文化を対象とした観光について、文化的真正性というのは世界中様々な分野でしばしば議論されています。

秋辺さんもまた、現代を生きるアイヌ民族として観光客に伝えるべき真正性とは現代社会との折衝の中で柔軟に構築されたものであり、既に構築された価値体系に存在する『アイヌ文化』のみを伝えることが必ずしも正当ではなく、時には危険性を孕むということを自らの経験をもってお話し下さいました。

正統な、純粋性をもったアイヌ文化の側面と、現代社会に生きる中で生まれた大衆的な側面、二つの相反する価値の間でどこに落としどころを探り価値を見出し商品にしていくのか、恐らく浦河でもアイヌ文化を観光資源に、選ばれる商品として磨き上げていく中で議論が避けられないテーマであると思います。

文化は必ずしも固定されるべきものではなく、生き物であるという柔軟な視点で。今後浦河に生きる アイヌ文化 がもっと身近に感じられるよう、浦河でも皆で考えていきたいなあと個人的には思っています。ある種洗練された、『Ainu Design』として、多くの人の生活に馴染むようなものをこれから作っていけたらきっと素敵です。

 


1日目の夕食は、せっかくの機会なのでアイヌ料理をセレクト。アイヌコタンに並ぶ民芸喫茶ポロンノさんへ。トリップアドバイザーや北海道Likersでも度々紹介され観光客が多く集まるお店です。


かぼちゃとシケレベの実の入ったラタシケプ。



ユクオハウ(エゾシカの汁物)、めふん(鮭の血合の塩辛)、豆ごはん


ポッチェイモのピザ。

ポッチェイモ(しばれ芋)… 芋を雪に埋め発酵するのを待ち、雪解けを迎えたら芋の皮を剥き、潰し、洗い、乾燥させる。食す時には水で戻し、練ったり挽いたりして成型する。

フリーズドライの原型ともいえる、自然環境を生かしたアイヌ民族の伝統的な保存食です。色々な調理方法があるそうですが、生地はもちもちで風味もよく、癖がないのでトマトソースやチーズとも合いとても美味しかったです。

『食』はきっと誰にとっても親しみやすい切り口だと思います。堀さんの作る、浦河の新鮮な食材をふんだんに使ったアイヌ料理も、バリエーションが本当に沢山あって色鮮やかで、味付けもとても美味しいんです。今後体験プログラムとして、浦河のアイヌ料理に触れられる機会も本格的に検討していきたいと考えています。


夜はアイヌシアターイコロでほぼ毎日上演されるアイヌ古式舞踊を見学。


国の重要無形文化財・UNESCOの無形文化遺産に登録されているアイヌの古式舞踊。あらゆる神や祖先への敬意を表する、アイヌ民族の生活にはなくてはならない歌や踊り。仕事の中で歌われるものや、祭事で用いられるもの、遊びの中で用いられるもの。着物に施された文様も地域ごとにまた異なっていたり、歌や踊りの種類も地域によって全く変わってくるそうです。ちなみに浦河には昆布拾いの歌が伝わっています。浦河らしいですね!

最後は、ポロリムセ。大勢になって、輪になり踊ります。


アイヌコタンのアイヌ文化を独自に観光と結びつけてきた阿寒湖温泉とは恐らく手法も課題も異なるのでしょうが、何か形にできそうな気が参加者の間でふつふつと湧いた夜でした。

 

レポート③では、NPO法人阿寒観光協会の早朝散歩ツアー、大樹町地域おこし協力隊へのヒアリングについてお届けします。

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